1.見積財務諸表って何だ?・・・それは、不動産投資は表面利回りで判断しないほうがいいという証拠です。
見積財務諸表という言葉を知っている人は、日本に1000人もいないと思います。
どういう人が知識として知っているのかというと、CPM(認定不動産管理士)というアメリカの不動産に関する資格(2025年2月25日時点のCPM資格保有者は日本人で708人)を持っている人などです。つまり、資格を取得する過程で学んだ人たちは知っているということになります。
「一般に広まっていないのであればあまり意味がない概念なのではないか」という疑問を持ってしまいますが、私はそうでもないと思います。
「見積財務諸表をきちんと理解していたら、不動産投資はしなかった」という人がたくさんいると思いますので、今回思い切ってお伝えします。
日本では、表面利回りが何パーセントなのかで不動産を買う、買わないを判断している人は多いと思います。しかし、アメリカでは投資用不動産に利回り表示がされていることはほぼありません。つまり、表面利回りという数値はアメリカでは重視されていないのです。なぜならば、投資の判断ができない数値だと考えられているからです。
「見積財務諸表」という名称を分解しますと、「見積」と「財務諸表」に分けられます。見積は見積であり、これから発生する経費、請求されるものです。すでに結果が出ているものではありません。これが『ミソ』です。
そして財務諸表は決算書のような資産状況を表す書類となります。もちろん、不動産に関する資産状況に限定されます。それも、一つの不動産について一つの書類が必要となります。アパート一棟と区分マンション一戸と賃貸戸建て一戸で合計3つ持っているから、3つの資産状況が一つの見積財務諸表にまとまっているということはありません。合計3つ、ばらばらに必要となります。
およそ、未来にどのくらいのお金が入ってきたり出ていったりするかを予想してまとめた表のことです。不動産投資の場合、以下のような項目が考えられます。
- 収入:建物を貸し出すことで得られる家賃など
- 運営費:公共料金の支払い、保守管理費など
- 利益:収入から支出を引いた残りのお金
この表を作ることで、投資を始める前に「この不動産投資でどれくらいの利益が見込めるか」「リスクはどの程度か」を判断する手助けになります。
2.例えばこんな感じ
アメリカの一般的な住宅(例:月々家賃約$2,000の一戸建て)で年間2%の成長を仮定した場合の見積財務諸表はこんな感じです。
3.見積財務諸表を作るときは
見積財務諸表を作るときは、まず過去の収入(家賃が何月にいくら入ったのか)と支出(経費が何月にいくらいくら出ていったのか)の記録を集めます。一年でいくらの家賃が入ったかではありませんよ。月ごとに集計するのです。保険金収入などがあった場合はそれも収入とします。そして、経費も大体ではなく、廊下の電気代、火災保険料、固定資産税、不動産業者に支払う管理費、広告費、修繕費、原状回復費など全てを探しだします。通常、ローンの支払いはここでは計上しないのですが、本当の手残り金額が知りたいという人にとっては、ローンの支払いも計上したほうが便利に感じるかもしれません。
資料の収集は過去3年分くらいがいいと思います。なぜ3年分かと言うと、入退去やそれに伴う原状回復工事の費用、退去してから入居までどれくらいの期間がかかるのか、などの傾向が大体わかるからです。
その後、これまでのデータをもとにこれからの5年間の収入と支出を予測し、エクセルなどで5年分の見積財務諸表を作成します。ちなみに、入力するフォーマットはなんでもいいです。上記の画像を参考にしてエクセルで作成頂いても結構ですし、手書きの家計簿でもいいと思います。単なる足し算と引き算ですので。
ところで、作成するのはなぜ5年先までなのか。それは、短すぎず長すぎず、経済の変化や突発的な出来事の影響をある程度吸収しながら、将来の傾向を読み取るのに適した期間だからです。
将来を予測できるのは、せいぜい5年先くらいまでということは、結構いろんな投資で用いられている概念です。
予測を立てるときは、現在の市場の状態や業界の動き、法律や政策の変化などを考え、どんなリスクやチャンスがあるかを見ます。
未来を完璧に当てることはできませんが、不確かさも含めた現実的な予測を目指します。そして、集まった数字を元に去年の同月の家賃収入を準用して来年分の家賃収入を計上します。過去三年分の実績から鉛筆なめなめで作成するのです。経費は一つも落としてはなりません。
この作業は正に「地味な労働」の代名詞…。
数値の海を泳ぎながら、どこかで異常値が潜んでいないかも気にかけてチェックしていきます。
エクセル(手書き)での集計&入力がおわったら、見積財務諸表が完成したことになります。
メインディッシュである、分析のパートです。
まず、「家賃が異常に高い月がある」「電気代が異常に安い」「不動産業者への支払が異常に多い」など、異常値がないかをチェックします。偶発的なミスか、または予想外の出来事を反映しているかもしれません。こうした異常値に遭遇したとき、「おかしい」と片付けるのではなく、なぜそのような数値が出たのかを考え、原因を探ります。
そうすることで、投資対象としている不動産の傾向、つまりメリットとデメリットがわかると思います。
どうでしょうか。思ったより収入は少なく、支出は多いと感じませんか。手残りはいくらになりますか?
株への投資と比べていかがですか?国債や社債のほうがいいかもしれませんね。
4.まとめ
見積財務諸表の作成は少し大変ですが、安心して不動産投資をするうえで欠かせないものになります。過去のデータを集めて整理し、表やグラフにして数字をチェックしながら、実際の状況に合わせて計画を立てる作業、それが見積財務諸表です。
現実と向き合いながらも客観的にチャンスに対応するための、実践的なツールとしてご活用ください。