不動産に限らず、専門的な投資家は、将来得られる家賃収入や売却手取り金などのキャッシュフローを「今の価値」に換算し測定して判断することがあります。この換算に使われるのが「割引率」です。ただ割引率は設定が難しく、適切な数値を選ぶことが投資判断の大きな壁となっていました。今回は割引率の基本的な考え方やその役割、さらに具体的な選び方についてなんとかわかりやすくご紹介したいと思います。
1.割引率って何だ?
割引率とは、将来得られるお金の価値を、現在の価値に換算するための「利率」のことです。
あなたは、明日もらえる100万円と10年後にもらえる1000万円のどっちを選びますか?ということにつながります。
10年後には、お金の価値が下がっているかもしれないし、病気で死んでいるかもしれない。でも100万円より1000万円のほうがいいよな。などなど、考える要素はたくさんありますよね!
- 今100円を持っていると、銀行に預ければ利息がつきます。そのため、未来に同じ100円を受け取ったとしても、今の100円の価値には及ばないという考え方です。
- 超メジャーなDCF(割引キャッシュフロー)分析では、この割引率を用いて、各年のキャッシュフローを「現在価値」に直し、投資全体の価値を評価します。
- また、割引率は投資家が要求する最低限の利回り(リスクプレミアムを含む)としても用いられ、投資判断の基準となります
割引率は以下のような役割を果たします。
【将来のお金を「今」の価値に変換】
将来得られるキャッシュフローは、時間が経つほど価値が下がると考えられます。割引率を高く設定すれば、未来の収入の現在価値は低くなり、逆に割引率が低ければ、現在価値は高くなります。
【投資評価への影響】
- 例えばある物件から毎年一定の家賃収入が得られる場合、割引率を使って計算することで、物件の正味現在価値(NPV)を求めることができます。NPVがプラスであれば、投資として魅力的であると判断でき、マイナスであれば割に合わないと評価されます。
- また、割引率はIRR(内部収益率)の算出にも関わり、将来の収入がどれだけ効率よくお金に変わるかを示す重要な指標となります。
※NPVとIRRについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
2.割引率の選び方
ここでは割引率の決定方法と、具体例を用いた選び方について解説します。
2-1.割引率の決定方法
一般には無リスク金利(例えば国債利回り)に、将来のインフレ率や投資に伴うリスクプレミアムを加えたものが基準となります。
つまり、投資家が「この投資ならこれだけのリターンが欲しい」という最低限の期待利回りを表す数字です。
具体例①:シンプルなケース
あるマンションを購入して、今後数年間で毎年安定した家賃収入が得られるとします。
– このときに金利が低く、経済が安定している場合、投資家は低めの割引率(例えば年率5%)を使います。
– 年率5%の割引率を使うと、未来に得られる家賃収入を、今の価値に直したときに大きく減らさずに済むので、マンションの価値が高く評価されます。
具体例②:環境が変わるケース
逆に、経済が不安定で将来のリスクが高いと予想される場合は、投資家は高めの割引率(例えば年率8%)を使います。
– 高い割引率を使うと、同じ将来の家賃収入でも「今の価値」に直すときに大幅に減ってしまいます。
– その結果、マンションの現在価値が低くなり、投資として魅力が下がると判断されます。
このように、割引率は市況やリスクの大きさによって変えなければなりません。
・経済が安定していてリスクが低いときは低い割引率を使い、将来のお金の価値をあまり下げずに評価します。
・逆に、リスクが高いときは高い割引率を使い、将来のお金の価値を大きく減らして、より慎重に投資判断を行います。
2-2.割引率設定のポイント
実際の不動産投資では、以下の点を考慮して割引率を設定します。
リスク許容度
投資家がどの程度のリスクを受け入れられるかによって、割引率は変動します。リスクが高い場合は高い割引率を、低リスクの場合は低い割引率を用います。
市場の状況
金利動向、経済の安定性、インフレ率など、外部環境が割引率の選定に大きく影響します。
融資条件・レバレッジ
ローンの利率や償還期間なども、割引率の決定に含めるべき要素です。例えばレバレッジが効いている場合は、キャッシュフローのリスクも増すため、割引率を調整する必要があります。
※レバレッジについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
3.まとめ
- 割引率は、将来のキャッシュフローを現在の価値に換算するための重要なパラメーターです。
- 適正な割引率を設定することで、投資案件の魅力度を正確に評価でき、NPVやIRRを通じた投資判断の精度が向上します。
- 具体的な数値例や市場環境の変化を考慮することで、実務に即した割引率の選択が可能となります。
- リスク許容度や市場状況、融資条件などを踏まえた割引率の設定を行い、より合理的な不動産投資判断を実現しましょう。
投資家の皆さんが割引率の意味と具体的な選び方を理解する一助となれば幸いです。正しい割引率の設定は不動産投資の成功に直結する重要なポイントですので、ぜひ実務でも意識してみてください。