入居者が消えた日
入居者が家賃を払わなくなった。
管理会社が退去(エビクション)の裁判を起こした。
相手は欠席。判決は出た。
そして家には、もう誰もいなかった。
実際に会ったことのある家族だった。だから少し気になる。
どこへ行ったのか。無事なのか。
でも同時に、オーナーとしては現実もある。家は止まったままでは収益を生まない。
聞いていた通り、テキサスの退去手続きは速い。
安い。
そして、オーナー側にかなり有利だ。
管理会社の説明はこういう感じだった。
- 退去の手続きは「no pay, no stay(払わないなら住めない)」が基本
- もし最悪、入居者が7月まで粘っても、まずは管理会社が対応
- 社内で対応できる単純案件なら費用は抑えられる
- ただし揉めて複雑化したら弁護士を勧める
費用感も数字で出ていた。
- 管理会社の基本費用:$300
- 裁判所の申立て費用:$139
- 追加の法務費用(見込み):約$200
- 合計見込み:約$640
一般的な弁護士に頼むと、単純な退去でも$900前後になることが多い、という比較も添えられていた。
数字は正直だ。やさしくないが、わかりやすい。
そして今は、原状回復と再募集
現在は原状回復工事をして、再募集に入っている。
家は 3 beds / 2 baths / 1,910 sqft。
土地は体感で「200坪くらい」のサイズ感。日本の感覚だと広い。テキサスだと「普通」の顔をしている。
賃料は管理会社の見立てだと $2,300〜$2,500。
Zillowでは $2,400 で募集が出ていた。
2026年3月3日現在、1ドル=157円。
$2,400 は 376,800円。
日本の相場で見ると、家賃としては高い。
でも家がデカい。土地もデカい。駐車場もデカい。デカいが正義、という国だ。
収益の話は、ロマンを削る
ここから現実。
この家の毎月のローン支払いは $2,393。
仮に $2,400 で貸せても、差額は $7 しかない。
さらに管理費が $150 引かれる。
つまり、$143の赤字。
数字はウィットがない。容赦もない。
「家賃が入ればプラス」という素朴な夢を、秒で折る。
だから願う。
時期が来たら、家賃を上げられることを。
あるいは、市場が戻ることを。
願いは無料だ。いまのところは。
金利の話と、市場の肌感
新聞で「高金利で家が買えない人が増えた」と読んだ。
管理会社の見方も近かった。
- 高金利で購入が鈍る → 売買市場は弱くなる
- 経済も全体にソフト
- 売り物件も賃貸物件も在庫が多い
- 借り手を見つけるのに時間がかかりやすい
募集の回転は平均 3〜4か月 という目安も出ていた。
速くはない。遅すぎもしない。いまの空気だと、そんなものらしい。
次は、同じことを起こしたくない
じゃあ、もう二度と家賃未払いの入居者を入れない方法は?
そう聞きたくなる。誰でもなる。
そこで出てきた話が、少し意外だった。
住宅補助(housing assistance)に頼る入居者は、むしろ安定していることが多い。
政府が家賃の大半を直接払うケースがあり、支払いが堅い。
転居も少なく、長く住む人も多い。
管理会社の担当者は「自分の物件も補助の入居者ばかりだ」と言った。
今回の未払いは「複数の不運が重なった例外」で、典型ではない、という立て付けだった。
なるほど、と思う一方、オーナーの心は冷える。
例外が一回起きれば、それはもう“体験”だからだ。
だから、書く
購入したのが2024年8月18日だから、2026年3月3日現在でもう一年半近くが経つ。
その間、出来事は目まぐるしかった。
でも日本の本業が忙しくて、メモも備忘録も残してこなかった。
だからいま、まとめて書く。
アメリカの文化に慣れていない日本人が、テキサス州ヒューストン郊外の一戸建てを、賃貸収益目的で買う。
すると何が起きるのか。
起きる。普通に起きる。淡々と起きる。そして数字で殴ってくる。
誰かの役に立てたらうれしい。
少なくとも、次に殴られる人がヘルメットを用意できるくらいには。